社交不安障害
社交不安障害とは、人前で恥をかくことを恐れ、その緊張のあまりに心理的に苦痛を感じる障害です。過去、社交不安障害は対人恐怖症と呼ばれていました。日本人にはこの呼び名の方が、馴染があるかもしれません。しばしば、対人緊張の強さから、動悸や嘔気が出現することもあります。パニック障害の患者さん同様、人前で緊張する場面を避けがちになることから、日常生活に支障を来すようになります。
発症要因として、神経伝達物質の一つである「セロトニン」の不足が考えられていますが、これだけで、本障害の全てを説明したことにはなりません。やはり、人前で恥をかくことを恐れたり、周囲に対し見栄っ張りだったりするなどの性格傾向が大きく影響を与えていると考えられます。
多くの場合、治療は、薬物療法と精神療法の2本立てで進められます。SSRIは患者さんの「こうあるべき」などの構えの強い心性を緩めてくれる効果を期待して、用いられます。しかし、本質は緊張や恥を「いけないもの」と捉え、常に「しっかりしよう」と過度に自身を叱咤激励する姿勢を見直しながら、不安な場面を安易に避けない取り組みが重要となります。そういう点では、不安を自然な感情と捉え乍ら、本来の行動に目を向けていく森田療法的な接近が良いと考えます。